センチメンタルな日。

kanoroot2008-01-18

風邪をひき、熱を出してしまいました。そんな間にも芥川賞が決まったり、直木賞が決まったり。


寝ながら、『ショートソング』枡野浩一、『妻と私』江藤淳、を読み終える。『ショートソング』は読んでるこっちが恥ずかしくなってくるような青春もの。桝野さんって、短歌ものすごくいいけど、めんどくさい男だろうなぁ(笑)。また公式HP(http://masuno.de)が見ててイライラするつくりになっていて、なんてウザイ男なんだ!(褒め言葉です)と思ってしまった。


『妻と私』は読む時期を間違えました。
熱がマックスだったのが今週火曜の夜。その日の昼間は元気だったので、出産した友達のお見舞いに行きました。行く前は“ああ、あの病院久しぶりだなぁ”くらいにしか思ってなかったのですが、着いた途端、記憶がぐわっと甦ってきて息苦しくなってしまった。
友達が入院していた病院を前回訪れたのは、私の母親が亡くなる2週間ほど前のことでした。入口に足を踏み入れた瞬間から、あの日の車椅子を押す手の感触、母親の着ていた服、診察室の椅子の硬さ、医者の表情、ホスピスの窓から見えた景色、などが一気に押し寄せてきた。本当に参りました。慌ててそれを脳のはしっこに押しやって、友達と赤ちゃんのことに意識を集中させて、一応大人なのでその場で取り乱したりせずに済みました。
が、そのせいで心身ともにくたびれて風邪を拾ってしまった気がします。しかも『妻と私』を読んでる時期と病院に行く日がかぶるとは。そろそろ時効だから読んでも平気だろと思って未読棚から選んだのに。きっと何かの陰謀だわ。一方的にやられるのも癪に障るので、傷口に塩をぬる勢いで読了しました。


江藤淳の言う「日常的な実務の時間」に私たちは戻ってきたけれど、亡くなった人と過ごした「死の時間」の記憶は一生忘れることができないんだな。

遠くから手を振ったんだ笑ったんだ 涙に色がなくてよかった  
(『ショートソング』枡野浩一